詳・スパルタンレース出来るかな 中編
~前回のあらすじ~
初挑戦となるスパルタンレース当日。
会場にはアスリートガチ勢が溢れ、パリピの巣窟のようなテンションに圧倒されながらも必死に前に進み続ける大人迷子。
心が折れそうになる中、無情にも現れる[1km]の看板。
果たして残り4kmと、まだ視界にも入らない20の障害をクリアすることが出来るのか。
どうも、大人迷子です。
前回は書いている途中でどうしても[1km]で終わらせたくなってしまいましたが、今回は中盤戦までをお送りします。
続く序盤戦
1kmの表示をみて思考が固まる。
「マジか…」
隣から同じ12:00スタート組のつぶやきが聞こえる。
「最初2kmですもんね?」
同意を求めてくる。
これは最初の給水ポイントの場所を聞いているわけだが、私は2.5km地点と勘違いしていたので「…そうでしたっけ」と力無く返すことしか出来なかった。
まだ1kmである。
残りは4km強(うち2km登り坂)で、しかもこの時点で障害は視界に入ってもいない。「世界最高峰の障害物レース」と言われるスパルタンレースの障害が、まだ20ある。
……なんと言えば良いのか。
やっとのことで撃破した強敵が、実はボスでもなんでもないザコ敵で、しかも目の前で無限湧きしているような気分だった。
消耗しきる前に勝ち筋を見付けないといけない。
止まりそうになる足を何とか動かして、前に前に進み続けるしかない。
そうするうちに、ある異変に気が付いた。
人が増えていた。
この時点で、12:00スタート組では上位5、6番目くらいだったはずなのだが、スタート直後と同じようにどんどん人を追い抜くようになった。
何故か。
11:45スタート組の最後尾である。
追い抜くばかりではない。
立ち止まる者、腰を下ろす者も目につくようになる。誰もが息を切らせ、滝のような汗をかき、その表情には疲労の色が濃い。
複数回参加者のものと思しき「今回はエグい」「前回はもっと平地だった」という怨嗟にも近しい呟きがたびたび聞こえてくる。
…良かった。俺がヘボだからキツいんじゃなくて今回がエグいだけか。
……全然良くねぇよ。
よりによって初参加でとびきりエグい回を引くクジ運。いや違うな。抽選でもあるまいし、誘蛾灯に群がるように自分から死にに行っただけの話だ。
スパルタンレースは開催地が毎回同じというわけではない。
冷静に考えてみれば予想がついた筈なのだが、ある程度地形を利用する関係などもあり、開催毎にコースレイアウトが違うようなのだ。今回の開催地はガーラ湯沢。スキー場である。高低差は予測してしかるべきであった。
何故登るのか。
そこに山があるからか。
知らねぇよバカ。
F◯ck!!
私の心は荒れていた。
それは怒りなのか憤りなのか。
しかしそれこそが私を支える最後の砦だった。
この気持ちが凪いだ時、私の心はバッキリと折れるだろう。
2kmの給水ポイントでも緩まず、ひたすらに進む。
そしてついに最初の障害を視界に納めたのだ。
やっと中盤戦
障害は見えたが見えただけだった。
ここから障害までの間にはしばし下り坂である。
下り坂はスピードを出したくなるが、それは絶対にやってはダメなことである。下り坂はヤバいとスティール・ボール・ランでも言っていたであろう。下り坂が終わり、平地に戻る際に一気に膝にくる。実際右膝がまぁまぁヤバかった。
下りきっていよいよ障害かと思えばまたちょっと登りを挟んでくる。しかもかなりの急勾配。鬼か。
再度のアップダウンを経て障害に辿り着いた時、解き放たれたようなささやかな感動があった。
ミッドガルから初めてフィールドに出た時のようだ。
俺はこれをやりに来たんだ!!
障害物ちょこっと解説
ここからは簡単な説明を交えながら進めたい。
便宜上、各障害をアスレチック系、自重系、パワー系、技術系の4つに分類したいと思う。
OUT
アスレチック系。
over(越える)under(くぐる)through(すり抜ける)の頭文字と思われる。
その名の通り垂直な壁を乗り越える、壁の下をくぐる、壁の穴をすり抜けるの3つで1セット。
最初の障害だけあって非常にチョロい。
申し訳ないが、これに手こずるようなら大人しく帰った方が良い。
Hurdels
アスレチック系。
その名の通りハードルだと思えば良いが、少々サイズがデカい。
ジャンプと腕の力で体を引き上げたら、足をかけて一気に越える感じか。
身長が低いほど相対的に腕の力がより必要になるため、自重系の様相を呈するようになる。
Slip Wall
アスレチック系。
ウォールとは言うが、坂である。
ロープを掴みながら滑りやすい坂を登るイメージ。
履いている靴のソールの状況によっては滑りやすさが増して難易度が上がるかも知れない。
Z Wall
アスレチック系。
Zというか、クランクしたような平面形状の壁である。その壁に2×4材の木っ端みたいな取っ手と足場が斜めにくっつけてあるので、渡っていってその先の鐘を鳴らす。
コーナー部分だけちょっとキツいかも知れない。
極力壁から離れないように注意。
壁にくっついていれば握力とかバランス感覚の問題だが、壁から体が離れるほど腕力が必要になる。
Atlas Carry
パワー系。
個人的には今回スプリントの中で二番目の難易度。
デカい砲丸みたいなモノが地面に置いてあるので持ち上げて、10m程向こうにあるフラッグまで行って戻ってくる。
サイズ感としてはナメック星のドラゴンボールくらいのイメージで重さは50kgくらい?普段持たない重量なのでちょっと自信がないが。
パワー系全般に言えるが、重さは男女で違う様子。
Monkey Bars
自重系。
要するに雲梯(うんてい)だが、公園などにあるモノと比べるとバーが太めで、距離も離れている印象。
渡っていった先の鐘を手で鳴らす。
自重系は「自分の体重に対して」十分な筋力が求められる点がポイント。パワー系のように馬力がありさえすればそれで良いわけではない。
6ft Wall
自重系。
その名の通り6フィート(約1.8m)の壁。
一番最初のOUTのOver(越える)部分の高さが違うだけだが、より腕の力が必要になるため自重系の扱いで分類。
Hercules Hoist
パワー系。
Hoistは「巻きあげる」という意味だそうである。
勉強になるなぁ(※英語苦手)
滑車を通じたロープの向こう側に重りが繋いであるので、ロープを引いて重りを滑車の高さまで引き上げ、ゆっくりと下ろす。(=「落とし」てはダメ)
どうも足は地面に着いてないとダメな様子。
体感だが重さは60kg程度だろうか。
純粋に腕力だけで引き上げても勿論構わないが、握力さえ十分なら自重を使えば楽。
しっかりとロープをホールドしたら、思い切り後ろにぶっ倒れて自重で引くイメージ。ロープを短く持ち替えて以下繰り返しである。
Vertical Cargo
アスレチック系。
固めのバンド?のようなモノが格子状に組んであるモノを垂直に上がって反対側から下りるだけ。
梯子を上り下りできるなら楽勝というレベルのモノ。
Rope Climb
自重系。
垂直に垂らされたロープを上って、一番上にある鐘を手で鳴らす。
腕力だけでクリアできるなら好きにすれば良いが、やはり足を上手く使っていくのが正道だろう。
Spear Throw
唯一の技術系。
その名の通りヤリ投げである。
個人的には最高難度。
これまで全て身体能力・運動能力を要求されていたのに対して突然技術を要求される鬼門。しかもやり直し不可の1発勝負である。陸上競技のヤリ投げだって3回投げられるってのに。
ここまでノーミスクリアだったのに初の失敗。
ペナルティのバーピー30回を喫する事になる。
ペナルティ
まぁしくじったモノは仕方がない。
言うてたたがバーピーである。
さくっと終わらせ
イテテテテテテ!!
ふくらはぎと太ももとハムストリングが同時につりそうになる。
前半3kmが予想以上に足にきていた。
何処かがつらないようにしようとすると他の何処かがつりそうになる。
……ヤバい、これはヤバいぞ!
……続く。
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☆スパルタンレース
ダジャレ先生(id:dajyaresensei)さん
正直「いけんじゃねぇかなー」と甘く見てた気持ちもあります。誤算でしたが(笑)